思考するガム

ミステリ、漫画、時々映画の感想ブログです。自分の好きなものを中心に扱います。

『カイジファイナルゲーム』感想/悪魔的に破綻したシナリオ(ギャンブル)

 

f:id:sikougamu:20200116211412p:plain

(この映画が好きな人は100%不快になると思うので読まない方がいいです)

 

 

ちょっと前の記事で某映画をディスりましたが、カイジと比べれば生温い代物でした。突っ込みどころは大量にあれど、話は破綻していなかったからです。原作がよくできていたのだから当然ですけど。

ちなみに僕は原作カイジが好きです(17歩までは…)。福本先生の元ファンと言っていいでしょう。映画シリーズの過去作も「こんなもんだよなぁ」と微笑ましく観れました。
しかーし!今作は桁が違います!興味のある方は覚悟を持って観た方がいいでしょう。ここまで破綻したストーリーの映画を観るのは久しぶりでした。

以下ネタバレとディスとツッコミのみで構成されます。

一応予告編はっときますね


映画『カイジ ファイナルゲーム』予告

 

 

 

 

作品紹介

福本伸行の人気コミックを藤原竜也主演で実写映画化した「カイジ」シリーズの3作目。前作「カイジ2 人生奪回ゲーム」から9年ぶりの新作となり、原作者の福本が考案したオリジナルストーリーで、「バベルの塔」「最後の審判」「ドリームジャンプ」「ゴールドジャンケン」という4つの新しいゲームを描きながら、シリーズのフィナーレを飾る。2020年・東京オリンピックの終了を機に、国の景気は急激に失速。金のない弱者は簡単に踏み潰される世の中になっていった。派遣会社からバカにされ、少ない給料で自堕落な生活を送るカイジは、ある日、帝愛グループ企業の社長に出世した大槻と再会。大槻から、金を持て余した老人が主催する「バベルの塔」という、一獲千金のチャンスを含んだイベントの存在を知らされ……。福士蒼汰、関水渚、新田真剣佑、吉田鋼太郎らがシリーズ初参戦し、過去作からも天海祐希、松尾スズキ、生瀬勝久らが再登場。監督は過去2作と同じ佐藤東弥。(映画COM引用)

 

盛り上がり要素0の『バベルの塔』

まず冒頭、説明ナレーションで、オリンピック後の日本は景気が最悪になりディストピアな世界になっていることが示されます。
いきなりぶっ込んできたなぁ(笑)、と実はこの段階までは好意的に観ていました。幼稚ではありますが、振り切った世界観は嫌いではありません。ディストピアな貧困社会を描いている割に登場人物の服装や肌が小綺麗だったりするディティールの甘さは、まぁスルーの方向で。

派遣社員として働いていてたカイジに、富裕層になれたっぽいハンチョウが『バベルの塔』というゲームを勧めてきます。
ルールは単純明快、「棒のてっぺんにあるカードを取れば勝ち」

まずこのゲーム、死ぬほどつまらなくてビックリしました。

「逆境に立たされたカイジが状況をひっくり返す」ことがカイジの基本構造であり盛り上がるポイントのはずなんですけど、この『バベルの塔』では最初から優位な立場。それが崩れることはありません。作劇的に考えて、「情報が間違っていて、むしろみんなから出遅れてしまう。そんな中、カイジが妙案をひらめいて一発逆転!」という流れになるのが自然ですが、そうはならないんですよねぇ。心理戦の要素も頭脳戦の要素もありません。これで面白くなる方が奇跡だと思うんですけど、脚本家の方はなぜこれで大丈夫だと思ったんでしょう。ギャンブル考案の原作者にも色々と言いたいですけど。

ドローンが来た時は物を投げまくっていた登場人物たちが、なぜかカイジには物を投げつけないのも不自然でした。躊躇しているのかなと思っていると、鉄柱を揺らしたり「落ちろ!落ちろ!」と喚いていたりするので、本当に意味不明です(ドローンと同じくらいの高さなので投げれば当たる可能性大)。ちなみに今作の登場人物はメイン、サブ、モブ、全員が意味不明な行動をするので、まだこれは序の口です。

ここでカードから情報を得たカイジは、また別の金持ちと接触して、その金持ちの「私がニッポンを救いたい!」という願いを叶えるため立ち上がります。(本作のカイジは、ひたすら金持ちに支援してもらいながら操り人形をまっとうしますw)

 

 金持ちのおっさんが資金集めをするのを見せられる苦痛『最後の審判〜人間秤〜』

メインのギャンブルですが、本当に退屈の極みでした。そして粗だらけという内容になっています。

ルールはこちらも単純で、「より多くの資金を積み上げた方が勝ち」というもの。まずお互いの全財産を出して、それから「ファミリー」「フィクサー」「フレンド」「ファン」から、それぞれお金を出してもらうという流れ。
結局のところギャンブル前の仕込みが全てで、現在進行形でハラハラする要素は皆無。心理戦、頭脳戦の要素も皆無という、ひたすら退屈な場面をみせられ続けました。このギャンブル中にカイジがしていた行動はぎゃーぎゃー喚くことのみ。ヒロインの女もいちいち鬱陶しく、「カイジ側負けてくれないかな〜」と思いながら観ていました。
敵側の黒崎に寝返った秘書のエピソードも噴飯もので、感動げなBGMを流していましたが、尺を取りすぎだし興味がまったく沸きませんでした。愛着のないキャラクターが寝返ったところで衝撃が走るはずもありません。しかもこの秘書が提供した絵には「価値がなかった」って……あのー敵さん、それくらい調べておきましょうよ。全財産を賭けたギャンブルなんですから。


結局、黒崎側が優勢となりカイジ側がピンチとなります。何か仕掛けがあるんだろうなと思って観ていると、カイジがドヤ顔で言いました(壮大なBGMと共に)。

「この金を今からギャンブルで増やしてくる!」

お、おう……。今からほかのギャンブルしてくるんだね。でもカイジくん、君さっきから喚くことしかしてなかったんだから、最初から別の場所でギャンブルしていればよかったんじゃないかな。ほら、時間制限とかあるしさ…。効率化していこうぜ!

そんな観客が抱くであろう当然の疑問も何のその、カイジはほかの会場に向かいますが、すでに店じまいしていました。黒崎が手を回したみたいですね。カイジは頭を掻き毟って「どうすりゃいんだア〜〜〜…」みたいなことを言います。

 

あのー。ひょっとして君、馬鹿なの?


「俺の計画通りだ!」って感じで走り出してたけど、無策じゃねえか。他のギャンブルで勝つ見込みがあるから駆け出したのかと思ったよ! ただの運任せかい!


この時点でツッコミ疲れで死にそうになりますが、まだまだこの破綻したシナリオは序章に過ぎません。
偶然ギャンブル会場に足を運んでいた遠藤が登場します。そしてカイジに助言をします。(ご都合主義だと思ったそこのあなた、細かいことを気にしてはいけない!寛容な心で見るのだ!)

そしてこの遠藤の助言がまた苦笑を誘うもので、「ギャンブルに勝つには初めから正解をわかっておけばいいのよ」

……うん、当たり前だよね? 

 

運営側が適当すぎる『ドリームジャンプ』

遠藤の助言をもとにカイジはドリームジャンプに挑みます。十二本のバンジーのうち、一本しか命が助からない究極のギャンブルです。カイジは「一億かけるから当てたら十倍にしろ」といきなり俺ルールを発動させ、運営側はあっさりとそれを承諾します。カイジが唯一自分の命を賭けるギャンブルですから、盛り上がらない方がおかしいです。
で、カイジたちの策略は二つ。「コードを切って(?)、前回と同じ番号をあたりにする」「捨てられた券を見つけて、あたり券を推察する」

うん!いろいろと突っ込みどころがあるけれど、どこから突っ込んでいいのかわからない!

作中では、当たり前のようにコードを切っていましたが、この施設には「警備員」「監視カメラ」「防犯装置」は存在しないんでしょうか? ザルすぎます。っていうか、どのコードを切れば前回と同じ当たりにできるのか分かっていて、なおかつ監視がないことを初めから知っていたなら、この『ドリームジャンプ』で儲けておけよ!ぎゃーぎゃー喚いてないで!

運営側の部屋では「あれれ〜おかしいぞ〜。ま、ギャンブル続行でいいか。俺黒崎嫌いだし〜。カイジが負けても黒崎が負けても俺得だわ〜」という理論のもと、ギャンブルは続行されます。普通なら中止でしょうね。この作品に普通という概念はありません。どいつもこいつも頭に脳味噌が詰まっていませんから。

ヒロインが捨てられた券から当たり番号を導き出します。捨てたられていた券があってよかったですね〜、と思いました。僕はその手の券、財布とかに入れて持ち帰ってしまうタイプだから、本当に恵まれていたと思いますよ。ゴミ回収とかもされていなくてよかったですね。ラッキガールという設定が活きている!(こういうのをご都合主義と言ってはいけない)

ヒロインはカイジの落下地点に侵入します。警備が警備をしていません。で、ヒロインが必死に「9」という数字を伝えようとするのですが、運営側も流石にどうかと思ったのか、サイレンを流して妨害します。
そこでヒロインの取った行動は、「キュー」というポーズを取ること。これは作中、しつこいくらいヒロインが行なっていた行動です。こういうのを伏線と言っていいのでしょうか。ヒロインの「キュー」という口癖と動きは、あまりにも不自然で、「あとあと伏線にするぞ〜」という作り手の声が聞こえてきて赤面するしかありませんでした。実際に伏線にするという恥知らずなことをしているわけですが。

ここで十億稼いだカイジが、『人間秤』に金を投入しようとしますが、時間オーバーに……と見せかけて、実は会場の時計の針を五分進めてたんだってさ!(ここでカイジは投入をせず、長々と解説に時間を割く間抜けっぷりを見せる)

でかい時計が会場にあればスマホとかで時間を確認しなくなる!という微妙に納得しかねる理屈でゴリ押ししますが、しかしこのトリックって、そこまで意味ありました? 敵を油断させるために不法侵入して細工したの? リスキーやなぁ……。 

最後は時計の針を伝って金貨が落ちたことでカイジたちが勝利しますが、ここの部分に納得しかねるのは僕だけですかね? すでに結果発表の段階に入っているわけですから、その時の金貨投入は無効じゃないですか? 誰も突っ込んでなかったので、ひょっとして僕がルールを誤解しているだけかもしれません。

ま、それ以前のところでガタガタなので、評価が上がることは絶対にありませんが…。

 幼稚園児レベルの駆け引き『黄金ジャンケン』

最後のギャンブルなので本来は一番盛り上がるポイントになっていたはず。しかし、これが本当に噴飯もので、大の大人が真面目に作ったものとは思えない仕上がりになっていました。

まずルールの提示の下手くそさで萎えるんですけど、まぁ三回勝負のじゃんけんに特殊ルールがついているという認識でよろしいかと。

「一回は必ず金のボールを握った状態でグーを出さなくてはいけない」
「金ボール握った状態で勝てば、その金を手に入れられる」
「あいこでも相手側の勝ち」
「相手側は勝つごとに、カイジの握っている三つの情報のうち一つをゲットできる」

まぁこんなところですかね。
ごちゃごちゃルールを並べましたが、単純な話「一回は金の玉を握ってグー出さないとダメだよ」ってジャンケンです。逆にいうと、一回金の玉を握って出せば、あとは何を出してもOKな運ゲー。


ここでのカイジの勝利条件って、金を得ることではないんですよ。だから必ず金を握って「グー」を出すという前提はおかしいのに、登場人物がどいつもこいつも「グーを出すときは金の玉を握っているはずだ!」という前提で話をしていて、本当に頭が悪いと思いました。馬鹿なの? こんなのが黒幕でいいの?

そこからは怒涛のどんでん返しとは口が裂けても言いたくもないような後出合戦です

「実は買収していたのだ!」「実は監視カメラの映像を入手していたのだ!」「実は時間が来れば開くようになっていたのだ!」

うん、もうどうでもいいや!(ぶん投げ)

不快と脱力のオチ


ドームみたいなところで(ひょっとして待ち合わせしていたの…?なんでドームなの?)黒幕と小学生レベルの言い争いをして、いろいろな突っ込みどころを残してオチに向かいます。
カイジらしいといえばカイジらしいですが、どうなんでしょうねこのオチ。ヒロインはカイジに懐いていて慕っていたのに、あの裏切りはひどくないですか? 彼女にメリットは何もないですよ。遠藤に「カイジの現金を山分けしよう」と言われているならまだわかりますが、ゴミみたいな助言しか遠藤はしていませんから、金を渡す必要はないでしょう。まさにオチのためにキャラクターを無理矢理動かすクソ脚本の典型ではないでしょうか。役者さんが可哀想です。

一つ褒められるところがあるとすれば、最後の藤原竜也のビールの飲みっぷりくらいでしょうか。脱力と共に渇いた笑いが漏れました。

 

まとめ


テレビ屋映画にまともな作品がないのは何故だろうか。小一時間くらい考えたくなりました。酷い映画ですが、みんなで突っ込みながら観れば、めちゃくちゃ楽しい愛すべき作品と言えるようになるかもしれません。…たぶん。

ここ数年で「貧困」「格差社会」をテーマにした作品は大量に出ましたが、その中でもダントツに酷い作品なのは間違いありません。これを観るなら同じテーマを扱った『万引き家族』『ジョーカー』『パラサイト半地下の家族』を観ることをお勧めします。まぁその三つを観てないのにこれを優先する映画ファンはいないと思いますけどね…。いないよね?

 

 

 

カイジ 人生逆転ゲーム

カイジ 人生逆転ゲーム

  • 発売日: 2015/12/16
  • メディア: Prime Video
 

 実は割と好き

 

カイジ2~人生奪回ゲーム~

カイジ2~人生奪回ゲーム~

  • 発売日: 2013/11/26
  • メディア: Prime Video
 

 う、う~ん…という出来