思考するガム

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『虚構推理』城平京/紹介と感想 本格の可能性を大きく広げた破格のミステリ

虚構推理 (講談社タイガ)

本格ミステリ大賞受賞作。漫画版はベストセラーとなり、現在アニメが絶賛放送中です。
相当な問題作/クセ玉ながら、本格マニアであれば楽しめる作品でしょう。キャラクター小説としても楽しいです。

ミステリ部分のネタバレはしませんが、構造には触れるので情報を入れたくない方は読まない方がいいでしょう。

 

 

 

 

 

作品紹介

<第12回本格ミステリ大賞受賞作!>
深夜、鉄骨を振るい人を襲う亡霊「鋼人七瀬」。それは単なる都市伝説か、本物の亡霊か? 怪異たちに知恵を与える巫女となった美少女、岩永琴子が立ち向かう。人の想像力が生んだ恐るべき妖怪を退治するため琴子が仕掛けたのは、虚構をもって虚構を制する荒業。琴子の空前絶後な推理は果たして成功するか?

 

終始ゾクゾクしっぱなし……息もつかせぬ物語とはまさにこのことだと思います。意外な展開、予想外な事実、桁外れな人物、奇妙な現実、異様な虚構、奇想天外な“戦い”――。絶妙に狙い澄まして放たれる数々の“驚き”の奔流に溺れそうになりました。作家・平坂読(『僕は友達が少ない』)

 

「本格」の今後が有する可能性を大きく押しひろげた一作。(作家・氷川透)

 

ただただ作者の才能に嫉妬するばかり。(作家・黒田研二)

 

おおおお前を倒すのはこの俺だ!(作家・汀こるもの)

 

内奥に錨を下ろした論理、奇矯でありながらつらぬかれたロジック。破格のミステリ。(作家・辻真先)

 

辻褄の合った論理こそ、時には真実から最も遠ざかるものではないか。(書評家・千街晶之)

 

驚きを通り越して爽やかな敗北感さえ抱かされた。(作家・太田忠司)

 

「真相」の意味について刺激的な考察を展開。(作家・大山誠一郎)

 

「本格ミステリのロジック」の持つ魅力と危うさを純粋培養したような小説。(作家・光原百合)

 

(Amazon引用)

 

 

本格ミステリにおける真相とロジックの虚無化

虚構推理が問題作と呼ばれるゆえんは真相にあります。普通のミステリであれば捜査や推理によって真相が導かれるわけですが、虚構推理では、最初から〈単なる事故〉だとわかっているのです。最初から真相がわかっている構造の作品の前例はいくつもありますが、この作品の異質なところは作中の登場人物が真相を知っているにも関わらず、その前提を緻密なロジックによって、自分たちの都合のいい答えに変えようとしている点にあると言えるでしょう。

舞台は怪異が存在する世界。岩永琴子は妖怪たちの抱える問題を解決するトラブルバスターとして、相棒の男と共に日本中を駆け回っています。男の方は嫌々という感じで関わっているわけですが。
そんなある日、宿敵と言える存在が悪巧みをしていることを二人は察知します。
アイドルの事故死におヒレをつけ、ネット上で都市伝説化させることにより、虚構のモンスターを作り上げていたのです。世間の恐怖心が高まれば高まるほど、そのモンスターは力をつけていくという設定です。
岩永琴子は相棒の元カノである警察官の力を借り、アイドルの事故死のデータを集めます。データが揃ったところで彼女が取った解決策は都市伝説を虚無化させることでした。
とはいえ「幽霊なんていないよ!」と叫んでも盛り上がっているネット住民が鎮静化するはずもありません。そこで岩永琴子が取った行動は怪談話よりもより魅力的な「アイドルの死の意外な真相」を作り上げることでした。
面白いのは、その真相の作り上げ方に本格ミステリのギミックを大量に使っている点でしょう。古典的なものから現代的なものまで、ありとあらゆる技法を使って意外な真相を提示していきます。証拠の捏造をしないあたりにこだわりを感じますね。筋が通っていて、なおかつ面白い真相なので、都市伝説でキャッキャッしていたネット住民たちも、掌を返してオカルトではなく事件としてアイドルの死亡事故を扱うようになるのです。
しかもこの解決シーン、多重解決になっていて一つの解答だけで終わらせていないのが凄まじいところです。最後の推理が紡がれた時、なぜ多重解決構造になっていたのか判明し、ハッとさせられました。本格好きであればこの解決シーンはニヤニヤしながら読むことができるでしょう。
ブログのコメント欄で山場が展開されるというのも異質な感じがして好きですね。岩永琴子が提示する解答をネット住民が半信半疑になりながら読み、いつしか魅了されていくという下りにリアリティを感じました。この部分で失敗するとすべてが台無しになってしまいますから難しかったと思いますが、作者は高いハードルを見事クリアしていたと思います。
ネット上で推理が展開されるという意味では、『密室殺人ゲーム』っぽさもあり、ああいうのが好きな人にもオススメしたいです。

 

まとめ

本格ミステリ大賞受賞も納得の出来でした。本格ミステリにおける「精密なロジックの積み重ね」が如何に理屈の上だけで成り立っているものなのかを示した作品であり、「精密なロジックの積み重ね」自体の面白さや魅力を示した作品でもあります。本格ミステリの本質を鋭く描き出されていました。本格好きなら絶対に読んで損はないでしょう。
個人的には『名探偵に薔薇を』のような作品を作者には期待したいのですが、十分にこちらも楽しめました。多重解決構造になっているところなんかは共通してますからね。無論オススメです。

 

 

虚構推理 (講談社タイガ)

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  • 作者:城平京
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2019/01/15
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