思考するガム

ミステリ、漫画、時々映画の感想ブログです。自分の好きなものを中心に扱います。

『虹の歯ブラシ 上木らいち発散』早坂吝/紹介と感想 作者の才気が炸裂した問題作

 

虹の歯ブラシ 上木らいち発散 (講談社文庫)

らいちシリーズ第二弾!

今回は短編集です。処女作『○○○○○○○○殺人事件』の強烈なインパクトに負けず劣らずの怪作にして問題作に仕上がっており、「いよいよこの作者はとんでもない領域にいったぞ…いろんな意味で」とミステリ界隈をぞわつかせました。間違いなく好みはわかれるでしょうが、その前代未聞の試みを覗き見る意味でも、一読の価値は絶対にある作品でしょう。昨今の本格ミステリに対する批評性も感じられるので、思いのほか多様な読み方ができると思います。

下品なネタが苦手という人にはオススメしづらいですけど!笑

 

 

 

 

作品紹介

援交探偵・上木らいちが住む高級マンションの自室には、曜日ごとに通ってくる固定客用に虹色の歯ブラシが揃えられている。現場に女性の胸部の死斑変化を記録したカラーコピーが残されていた事件、セックス教団の教祖が密室で殺害された事件…エロい難事件の数々を、らいちがロジックで鮮やかに解き明かす!(Amazon引用)

 

多重解決やドンデン返しの孕む危険性

近年の本格ミステリでは定番化してきている連鎖式(個別の短編が最後に繋がるフォーマット)になっているのですが、はっきり言って、かなり異質な繋げ方をしてるので、良くも悪くも唖然とさせられます。奇想と言っていいでしょう。

終盤の奇想についていけるかどうかで評価が真っ二つになるのは致し方ない気がします。しかしこの作品、ただ「気を衒っただけ」のものとして切り捨てるのは如何なものかと思います。

昨今の本格ミステリでは、終盤何度も構図をひっくり返す流れが定番化しています。インフレ状態と言っていいでしょう。中には『いやいや、5パターンくらいの解決見せられたけど、結局真相それかよ?』『二つ前の構図で止めてた方が…』と思えるものがあります。結局作者のさじ加減(矛盾の配置)でいくらでも構図を変えてしまえるわけですから、読者的には「もうどれでもいいんじゃいノ…」と冷めてしまう危険性を常に孕んでいるわけです。

作者はそのことに自覚的で、だからこそ、このような問題作を作り上げたのだと思います。近年の本格ミステリに一石を投じる、志の高いチャレンジと言えるでしょう。作者はそれを見事達成しているのだから驚かされます。

 

 

ミステリネタすべてにエロが絡むのは前作と同様で、一作目を受け入れられた方なら終盤までは普通に楽しめると思います。一つ一つの短編自体の出来も悪くありません。個人的には『紫は移ろいゆくものの色』が好きです。思わぬ形で冒頭の謎を回収する手際が実に見事。気を衒っているように見えて、本格ミステリ作家としては誠実なのが好感の持てるところですね。

 

まとめ

作者の実験性と問題意識が炸裂した怪作。キワモノ感もありますが、愉快な作品であることは間違いないでしょう。オススメ。

 

 

虹の歯ブラシ 上木らいち発散 (講談社文庫)

虹の歯ブラシ 上木らいち発散 (講談社文庫)