思考するガム

ミステリ、漫画、時々映画の感想ブログです。自分の好きなものを中心に扱います。

『[映]アムリタ』野崎まど/紹介と感想 天才・最原最早の真の目的とは?

[映]アムリタ 新装版 (メディアワークス文庫)

奇才・野崎まどの処女作。SFや本格ミステリの手法を巧みに使うその独特な作風で一部、カルト的な人気を誇る作家です。

処女作からその作家性は全開でした。

最後まで読むと、本格ミステリのあるテーマが内包された物語だとわかります。ミステリファンに強くお勧めしたい逸品です。

 

 

 

作品紹介

自主制作映画に参加することになった芸大生の二見遭一。その映画は天才と噂される最原最早の監督作品だった。彼女のコンテは二見を魅了し、恐るべきことに二日以上もの間読み続けさせてしまうほどであった。二見はその後、自分が死んだ最原の恋人の代役であることを知るものの、彼女が撮る映画、そして彼女自身への興味が先立ち、次第に撮影へとのめりこんでいく。 しかし、映画が完成したとき、最原は謎の失踪を遂げる。ある医大生から最原の作る映像の秘密を知らされた二見は、彼女の本当の目的を推理し、それに挑もうとするが――。 第16回電撃小説大賞<メディアワークス文庫賞>受賞作。(Amazon紹介)

 

天才・最原最早と映画づくり

大学生の二見は、天才映画監督の最原最早と映画作りをすることになります。

天才に振り回される青春コメディかな?というコミカルな出だしに油断していると、強烈なカウンターパンチを喰らうのが本書の楽しくも怖いところ。

最早の作った絵コンテを見ただけで、意識が消し飛ぶという常軌を逸した展開や、過去の最早にまつわる不気味なエピソードなど、興味を惹く要素がてんこ盛りです。映画作りはどのような顛末を迎えるのか。期待して読んでいくと、正直肩透かしを喰らう展開になります。「あの天才が作った映画にしては普通すぎる」のです。

しかし、この『なぜ天才・最原最早が期待外れな映画を撮ったのか』というのが、推理小説におけるホワイダニットとして主人公の前に提示されるのが面白いところです。かなり捻ったホワイダニットと言えますね。

 

そして、映画の完成と共に最早は姿を消してしまうのです。

 

推理の先にある強烈なオチ

二見は、最原最早の行動の理由を推理します。

推理によって示される答えは、なかなかのインパクト。序盤から貼られた伏線が見事に活かされています。

正直、この段階でも十分に優れたミステリと言えそうですが、野崎まどは、更にここから残酷な真実を読者と主人公に突きつけるのです。

人によっては、序盤のコミカルな印象とは対照的すぎて困惑を覚えるでしょう。しかしそれ以上に優れたミステリを読んだ時の感動がありました。

やはり想像を超えるものを見せてくれる作品は好きです。

 

野崎まどの初期5作と『2』

『アムリタ』、『舞面真面とお面の女』、『死なない生徒殺人事件』、『小説家の作り方』、『パーフェクトフレンド』。

 

この5作を読んだ後に『2』を読むと、すべてが繋がります。

 

『2』は、『アムリタ2』であり、『舞面真面とお面の女2』であり、『死なない生徒殺人事件2』であり、『小説家の作り方2』であり、『パーフェクトフレンド2』なのです。

 

こんな繋げ方をするのか、と唖然とさせられました。アムリタを気に入った方は、初期5作を読んで『2』を読みましょう。凄まじい読書体験ができるはずですから。

 

まとめ

一風変わったホワイダニット小説の秀作です。

間違いなく一読の価値はあるでしょう。

 

 

[映]アムリタ 新装版 (メディアワークス文庫)

[映]アムリタ 新装版 (メディアワークス文庫)

 

 新装版、シンプルでいいですね