思考するガム

ミステリ、漫画、時々映画の感想ブログです。自分の好きなものを中心に扱います。

『天気の子』感想/セカイ系への肯定

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公開初日に観てきました。新海誠作品は今作と『君の名は。』しか観たことがなく、小説版も読んでいないというニワカ野郎だということをまず断っておきます。その上で思ったことをつらつらと書いていきます。今作が好きで新海誠ファンという方は不快になる可能性があるのでお気をつけください。

 

結論から言うと、自分はあまり楽しめませんでした。ただ、大スクリーンで観た方が良い、観る価値のある作品だとは思います。その点については後述します。

 

 

新海誠監督への印象

君の名は。を観るまで新海誠作品はスルーしてきました。作品の評価や作風は耳に入っていたんですけどね。

というのも、明らかに僕の好みではないと思ったからです。少年少女のセンチメンタリズム全開のモノローグ、すれ違い、切ないオチ。正直、僕の好みではないですね。

とはいえ、前作は社会現象レベルの大ヒット。どんなもんじゃい、と劇場公開して1年経ってから観たのですが、まさかの号泣。ミステリオタ的に反応せざるを得ない仕掛けなんかもあり、自分の中での新海誠評価は高くなりました。まぁ過去作はどうしても観る気が起きなかったんですけどね。『君の名は。』は楽しめたんですけど、自分には合わないところもあって。古参ファンからすると、その部分が過去作では強調されているらしいじゃないですか。なら僕が楽しめる可能性は限りなく低いことになります。観たら案外楽しめる可能性もありますが。

今作は監督自身が賛否両論出るだろうと言っていたので、警戒しながら観に行きました。

過去作のほぼ全てを観ていないので細かい比較はできないのですが、予想通り、自分が『君の名は。』で苦手だと感じた部分が強調されていました。

 

良かったところ

ここから良かったところと気になったところをそれぞれ述べていきたいと思います。

 

映像美

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誰しも褒めている部分ですね。リアルな東京の街並み、光の描写。

新海誠はもともと天気の描写が上手い監督だと思っていたので、天気を題材にすると聞いた時、「おお!」となったのを覚えています。実際に天気描写は素晴らしかったと思います。

 

振り切ったラスト

賛否両論と言われているラストですが、自分にとっては腑に落ちるものでした。作中での補助線が多かったので、「まぁそういう着地だろうな」と。逆に言うと、予想通り過ぎて拍子抜けしたくらいです。

変にバランスを取ろうと意識せず、作品のテーマをどんと提示する点は好感が持てました。

物語には毎回、倫理的な正しさが求められているわけではありませんからね。僕は嫌いではありません。

 

音楽

RADWIMPSはもともと好きなバンドでしたが、本当にいい曲を作りますよね。

天気の子はあまり楽しめませんでしたが、大スクリーンでRADの曲を聴けただけで満足度が高かったです。音楽の力でごり押ししているところもあった気がしますけど笑

 

 

気になったところ

ここからやや辛辣気味なので注意

 

セカイ系の難しさ

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セカイ系という言葉の大雑把な定義を言うと、『少年少女の内的葛藤や関係性の変化が世界に大きな影響を及ぼす』といったもの。セカイ系は「俺たちが世界の中心で、俺たちの周りにしか世界は存在しない」というような閉じた考えが前に出てくることが殆どなので、観る人によっては「独善的」「身勝手」「不愉快」と感じる場合があるでしょう。とはいえ、登場人物や世界観に入り込めれば、普通のエンタメ作品よりカルト的に熱狂しやすい傾向もあります。

 

昔から『少年少女が世界を〜』という作品は多かったですが、上手くセカイ系に見えない配慮がなされているんですよね。考え方が外向きだったり、主人公達の考えに同化しない他者を一個の独立した人間として尊重して描いていたり。

 

しかし、新海誠はそこら辺のバランスをあまり考えるタイプの作家ではない気がします。前作はプロデューサーがその辺のコントロールを上手くやっていたようですが。

 

今回は、セカイ系であることを前面に押し出していました。今時、これほどザ・セカイ系という作品は珍しいんじゃないでしょうか。

 

前述した通り、この振り切れっぷりには好感が持てます。セカイ系の全肯定がやりたかったというのもわかります。自分が特別な存在だと思いたい10代の少年少女には、こういう物語も必要なのでしょう。

 

ただ、何度も言うように自分はこの作品を楽しめませんでした。理由としては、メインの登場人物に感情移入できなかったからです。

自分はもともと俯瞰して物語を観るタイプなので、感情移入ができないならできないでいいと思っているんですが、セカイ系の場合、感情移入ができないと「どうでもいいなぁ」という思いに支配されて話が頭に入ってこなくなるんですよね。なぜこんなウジウジしたガキどもに世界の命運握られなきゃならないの?と。言い方は悪いですが、そんなふうに思ってしまいます。

 

感情移入できなかった理由

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主人公のバックボーンが語られるのは物語後半の山場前です。回想の怪我を負っているシーンで、ようやく家庭内暴力があったことが匂わされますが、それまではなぜ家出をし、なぜ家族ごっこをし、警察から逃げ回っていたのか、切実なものが見えてこないので、非常にどうでもいいなぁ、と感じてしまうわけです。小説版ではそこのところ詳しく書かれているらしいのですが、自分は映画しか観ていないので、映画のみで評価するしかありません。

 

バックボーンを語ることに比重を置いていないので、その後の展開もイマイチついていけず。もちろん、この作品はそこが重要でないこともわかるんですよ。観てくれた若者1人1人、自分の物語として受け止めてほしい、という作り手の意図は。ただ、やはりどうでもいいなぁと思ってしまいました。

 

それからもう一つ気になったのは、貧困描写です。主人公とヒロインはお互い貧困に苦しんでいたわけですが、結構都合よく仕事につき、都合よく居場所が与えられている点が気になりました。(まぁ後で奪われるわけですが)。晴れ女、というファンタジー性よりもこっちの方がファンタジー感が強くて、リアリズムのバランスが上手くいってないように感じます。大人のルールや常識の押し付けの理不尽さや世界の不条理性を浮き彫りにしたかったのであれば、晴れ女という部分以外は、リアリズムの度合いを強めた方が効果的だったのでは、と思ってしまいました。正直、銃も浮いていましたね。現実にある問題を扱って現代の東京を舞台に置いているのに、全体のファンタジー度を上げてしまったことにより、物語の絵空事感が強くなった気がします。切実性まで失われるので、あまり良くなかったのではないでしょうか。

 

主人公の考え方が幼すぎるのは、中学生なので仕方ないとして、自分が気になったのは、今作で主人公の取った選択や行動が、最終的には全肯定されている点です。

 

セカイ系の肯定、という話なのですから、そういう結論になるのは必然なんですけど、主人公の選択によって失われたものもあるわけです。主人公の行動の結果がアッサリと描かれ過ぎな気がします。ちょっと甘すぎる結末な気がします。ヒロインが、主人公を許し続ける単なる記号的な聖女キャラにしか見えなくなったのも自分的にはマイナスでした。

 

まとめ

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気になった点をたくさん書きましたが、絶対にスクリーンで観ておいた方がいい作品だと思いました。これだけ語れるってことはそれだけ刺してくる要素が多かったってことですからね。賛否は置いといて、ですが。

 

www.ntyg009.com

 

↑新海誠の過去作をちゃんと観ている人の真っ当な感想を読みたい方は上記の記事を読んでみてください。

 

人によって感じ方が180度変わる作品だと思うので、観た人同士で語り合うと新しい発見があって楽しめるかもしれません。

 

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