思考するガム

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『緋色の囁き』綾辻行人/紹介と感想 女学園に秘められた狂気

緋色の囁き (講談社文庫)

囁きシリーズ第一弾。つい先日読了したのですが、自分好みの作品で大変楽しめました。ネタバレなしの紹介と感想になります。

 

 

作品紹介

「私は魔女なの」謎の言葉を残したまま一人の女生徒が寮の「開かずの間」で焼死した。その夜から次々と起こる級友たちの惨殺事件に名門女学園は恐怖と狂乱に包まれる。創立者の血をひく転校生冴子は心の奥底から湧き起こってくる“囁き”に自分が殺人鬼ではないかと恐怖におののく。(「BOOK」データベースより)

 

魔女の死

主人公の冴子は、親族たちの都合で女学園に転入学します。そこは規則に縛られた監獄のような全寮制の学校で、生徒たちは抑圧された日々を送っていました。冴子と同室となったのは、生徒たちの中でひときわ異彩を放っていた高取恵という少女でした。彼女は学校の人間から魔女と呼ばれ、どういうわけか避けられていたのです。

彼女が死んだことにより、学園全体が狂気に支配されていく展開になります。

いえ、狂気が炙り出されていくといった方が正しいかもしれません。

主人公はその狂気の世界で、一人、真実に向き合わざるを得なくなっていくのです。

終盤はサスペンススリラーとして、なかなかの迫力がありました。

 

冴子と恵の甘酸っぱい百合展開で進行していくのかな? と期待していたことは内緒です笑

 

色濃く出た作家性

作者の趣味がてらいなく出ていて好感が持てますね。秘密主義の女学園、魔女、百合、スプラッタ要素。僕自身、好きなものばかりです。

物語の構造にも作家性が出ていると思います。

異常なルールが支配した世界に、異物である主人公が取り込まれ、混沌と破壊がもたらされる……この構造は、同作者の様々な作品に受け継がれています。

やはりどうしても連想してしまうのは同作者の傑作『Another』ですね。Anotherのプロトタイプと言っていい作品かもしれません。

 

赤、紅、緋

全体が赤のイメージで統一されていました。

津原泰水先生の解説でフォローがされていましたが、個人的には『赤』という言葉を出し過ぎだと思いました。朱い血、紅い夕陽、と書かれなくても、血や夕日と聞けば赤をイメージできるので、過剰な装飾はしない方がよかったのではないかと(過剰だと逆にイメージしづらくなるので)。ここは若書きの拙さが出た部分な気がしますね。とはいえ、効果を上げている部分もあることは否定できません。作者自身、この点については自覚しているでしょう(あとがき参照)

 

まとめ

館シリーズに比べて本格色は薄めですが、これはこれで面白かったです。閉鎖された女学園での狂気の事件の暴走っぷりを楽しんでみてはいかがでしょう?

オススメです。

 

 

緋色の囁き (講談社文庫)

緋色の囁き (講談社文庫)