思考するガム

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『罪の余白』芦沢央/紹介と感想 娘を亡くした父親の下した決断とは?

罪の余白 (角川文庫)

芦沢央先生の処女作。いまのミステリ的な作風を期待しすぎると、「おや?」と思うかもしれません。しかし間違いなく一読の価値のある作品でしょう。そもそもミステリ系の新人賞デビュー作ではありませんからね。以下ネタバレはありません。

 

 

作品紹介

どうしよう、お父さん、わたし、死んでしまう―。安藤の娘、加奈が学校で転落死した。「全然悩んでいるようには見えなかった」。クラスメートからの手紙を受け取った安藤の心に、娘が死を選んだ本当の理由を知りたい、という思いが強く芽生える。安藤の家を弔問に訪れた少女、娘の日記を探す安藤。二人が出遭った時、悪魔の心が蠢き出す…。女子高生達の罪深い遊戯、娘を思う父の暴走する心を、サスペンスフルに描く!(「BOOK」データベースより)

 

娘を奪われた父親、同級生を殺した女子高生

父親が娘の死の真相を追い求めていく展開かな、と思っていたのですが、死の真相はあっさりと氷解します。娘を死に追いやった女子高生が、証拠隠滅を図ろうと、父親に対して罠を仕掛けて……という感じで、物語はいくつかの視点を交差させながらサスペンスフルに進行していきます。

個人的には、父親とサイコパスっぽい女子高生の心理戦がメインだと嬉しいな、と思いながら読んでいたので、そこの部分が思いのほかアッサリしていたで、う~ん、と唸ってしまいました。ここらへんは好みですね。

とはいえ、作者の真骨頂である「心理描写」の上手さは秀逸。読ませます。

 

主人公を支える同僚

娘を失った父親を支えるのは、同僚である早苗という人物です。彼女は他者とコミュニケーションがうまく取れず、微妙なニュアンスを理解できない、いわゆるアスペルガーです。彼女の存在が印象に残りました。彼女を更に物語の本筋に絡ませてあげていれば、もっと深みが増していたかもしれません。とはいえ、現段階でも十分に彼女に役割は与えられていると思います。

 

まとめ

作者のファンなら読んで損はないでしょう。個人的にはいろいろともったいない部分がある作品だと思っていますが、そういう拙さも含めて、印象深い作品になっていると思います。

拙さ、と上記に書きましたが、語られていない余白の中にこそ、作者の真に語りたいものがあったような気がするので、自分はまだこの作品の凄さに気づいていない可能性もあります。作者のビギナーにオススメするのは躊躇われますが、すでに作者の作品を何冊か読んでいるという人にはオススメです。

罪の余白 (角川文庫)

罪の余白 (角川文庫)