思考するガム

ミステリ、漫画、時々映画の感想ブログです。自分の好きなものを中心に扱います。

『慟哭』貫井徳郎/紹介と感想 苦しみ抜いた男が最後に知った真実

慟哭 (創元推理文庫)

24、5歳でこれを書きあげたというのは驚異的ですね笑

圧倒的な筆力で、ぐいぐいと読者を引っ張っていきます。

読んでいて、ひたすら重苦しい気分にさせられる作品でした。

以下、ネタバレなしの紹介と感想になります。

 

 

作品紹介

連続する幼女誘拐事件の捜査は行きづまり、捜査一課長は世論と警察内部の批判をうけて懊悩する。異例の昇進をした若手キャリアの課長をめぐり、警察内に不協和音が漂う一方、マスコミは彼の私生活に関心をよせる。こうした緊張下で事態は新しい方向へ!幼女殺人や怪しげな宗教の生態、現代の家族を題材に、人間の内奥の痛切な叫びを、鮮やかな構成と筆力で描破した本格長編。(「BOOK」データベースより)

 

交互に描かれる物語

警視庁捜査一課長の佐伯と、宗教にのめり込んでいく男のパートが交互に描かれていきます。読んでいて、この二つのパートがどのように絡んでいくか興味を惹かれました。最後には、期待通り意外な形で二つの物語が交差します。

 

佐伯パートでは、警察小説でありがちなキャリア組とノンキャリ組の確執、足の引っ張り合いなどが描かれます。あまり好きな流れではありませんが、圧倒的なディティールで描かれるので、物語の中に自然と引き込まれました。

 

一方で、宗教にのめり込んでいく男のパートは独特な雰囲気で進んでいきます。ある種、幻想味を感じるほどです。こちらも話がどう転がっていくのかわからない魅力を兼ね備えていました。

 

やがて二つの物語の関連性が見えてきます。

佐伯は身内であるはずの警察官からよく思われていませんでしたが、ある展開を迎え、一気にその状況が変わります。もやっとしたものを残しますが、燃える展開ではありますね。

 

終盤はタイムリミットサスペンス的な要素を含みながら進み、まさしく『慟哭』せざるを得ない真実が主人公と読者の前に提示されます。これは辛い。辛すぎる…。

 

仕掛けそのものの上手さに目を向けてしまいがちですが、あくまでこの仕掛けはラストを際立たせるための手法だと思いました。作者は、このラスト一行のために物語を構築したのでしょう。作者の情念に共感できるかどうかで、本書の評価は決まると思います。

 

まとめ

万人にオススメ!と言いづらいところはあります。しかし、間違いなく一読の価値のある作品でしょう。本格的な要素と社会派的な要素、警察小説的な要素、すべてが詰め込まれた佳作でした。

 

 

慟哭 (創元推理文庫)

慟哭 (創元推理文庫)