思考するガム

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『さよなら神様』麻耶雄嵩/紹介と感想 「犯人は○○だよ」と神様の鈴木は言った。

さよなら神様 (文春文庫)

子供とミステリ好きにトラウマを植え付けた、あの性悪、鈴木太郎が帰ってきた!

一行目で「犯人は○○だよ」と神様が教えてくれる異色ミステリ短編集。作者はこの作品で、二度目の本格ミステリ大賞を受賞しました。ネタバレはありません。

 

 

作品紹介

「犯人は○○だよ」。クラスメイトの鈴木太郎の情報は絶対に正しい。やつは神様なのだから。神様の残酷なご託宣を覆すべく、久遠小探偵団は事件の捜査に乗り出すが…。衝撃的な展開と後味の悪さでミステリ界を震撼させ、本格ミステリ大賞に輝いた超話題作。他の追随を許さぬ超絶推理の頂点がここに!第15回本格ミステリ大賞受賞。

 

神様を前作以上に使い倒す

前作同様、この作品でも神様の力を疑う必要はありません。神様は真実を口にするのですから。そこを受け入れないと、どの短編も楽しむことはできません。

前作では神様が天罰を下していましたが、今回は犯人を教えてくれるだけです。表面的には、前作の方が神様という設定を使えているように見えます。しかし実際のところ、断然こちらの方が「神様」というギミックを使い倒せていると思います。

最初の三篇は、それぞれよくできていますが、犯人になりえない人物が犯人だと知っている前提で推理をしていくという、穴埋め問題のようなミステリになっていて、そこまで大きな驚きはないかもしれません。こういう解釈をすれば、この人も犯人になりえた、ということを推理していくわけで、やや苦しい解釈も見られます。神様が解答を教えてくれるからこそ成立している本格ミステリになっていますね。

 

問題となるのはやはり最後の三篇でしょう。

 

バレンタイン昔語り

まず序盤で腰を抜かしそうになりました。このネタでくるとは!

息もつかせぬまま、語り手たちは犯人のところに足を運びます。またもやアリバイ崩しものかと思っていると、想像を絶する急展開に雪崩れ込み、最後には驚愕の真実が暴かれます。この真相を推理で成立させるのは本来不可能でしょう。その不可能を可能にしてしまったという点で、ミステリー史に残る傑作と言っていいんじゃないでしょうか。

 

比土との対決

神様というギミックを、いつもと違った角度から使った作品です。上位の存在である神様ですが、彼は妙に操り人形めいて見えます。それが最もわかりやすい形で現れた短編ではないでしょうか。

 

さよなら神様

これは凄い(笑)

一連の短編に隠された、もう一つの物語が最後に姿を現します。一気にテーマ性が色濃くなりました。こういうのは大好きです。

ラスト二行では悶絶させられました。こんな読書体験は初めてです。いわゆるミステリ的などんでん返しというより、麻耶先生定番のちゃぶ台返しと言えますが、今までにない方向からの引っ繰り返し方ではないでしょうか。「うおォ…」と声が出ました笑

 

まとめ

神様というギミックを極限まで使い倒した本格ミステリの傑作です。かなりブラックなテイストですが、読まないのは勿体ないですよ。オススメです。

 

 

さよなら神様 (文春文庫)

さよなら神様 (文春文庫)