思考するガム

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『太陽の坐る場所』辻村深月/紹介と感想 過去にしがみつく彼ら彼女らの行きつく先は…

太陽の坐る場所 (文春文庫)

青春の終わりを肯定的に描いた連作短編集。個人的に作者がネクストレベルに到達した作品だと思っています。ネタバレはありません。

 

 

 

 

 

作品紹介

直木賞作家の、痛いほど切ない青春の傷を描く小説。誰にでもある青春の陰にある心の傷に向き合いながらも、生きていくかつての少年所少女たち。
今年もあの子はクラス会に来なかった――。高校卒業から十年。元同級生たちの話題は、人気女優となったキョウコのこと。クラス会に欠席を続ける彼女を呼び出そうと、それぞれの思惑を胸に画策する男女たちだが、一人また一人と連絡を絶ってゆく。キョウコがかたくなに来ないのはあの頃の出来事が原因なのか…...? 思い当たるのは、幼くも残酷だった日々の出来事。謎に迫るうちに、えぐりだされる過去の傷。教室内の悪意や痛み、十年後の葛藤、挫折そして希望を鮮やかに描く。(「BOOK」データベースより)

 

キョウコのいないクラス会

一話ごとに語り手が変わる形式の連作短編集です。登場人物は同じ高校の元同級生。年に一度クラス会が開かれ、登場人物たちはそこに出席します。

最初の短編である「出席番号二十二番」を読み始めた時、最初に思ったことは「気持ち悪いなぁこいつら」でした。登場人物が過去に縋り、狭い世界で生きようとしているのがとにかく気持ち悪いと感じたのです。女優となったキョウコをトロフィーのように扱かおうとしているのも最悪でした。多少気持ちがわかってしまう分、より不快な気持ちになったのでしょう。

とはいえ、そう感じるように作者が仕向けているわけで。僕は手のひらの上で鼻息を荒くしているだけなんですよね(笑)。感情の操作が上手すぎです。

彼ら彼女らを気持ち悪いと思えば思うほど、語り手が導き出した結論に胸打たれるわけです。キョウコという中心の人物が、彼ら彼女らに気づきをあたえる構成になっています。

出席番号一番

自分でもどうかと思うほど泣いた短編がこれでした。強烈なコンプレックスを抱えた女性が、友人の元彼と不倫の関係を築いていくのです。イヤミスっぽい流れで、どんな破滅が待っているのかと思ったら、最後は泣き死にするかと思うほどの着地をしてみせます。ミステリ的なミスリードも完璧で、作者のいままで読んできたすべての短編の中から一つ選ぶなら、僕は胸を張ってこれを選ぶでしょう。この文章を書いているだけで泣けてくるのだから凄いです。文句なしの大傑作ですね。

 

その他の短編

その他の短編も非常によくできています。上記で書いたように、「キョウコによって気づきをもたらされた語り手が過去にしがみつくことをやめる」という構成が殆どなのですが、微妙にパターンを変えていたり、ミステリ的な騙しをかましていたりするので、飽きることは決してありません。

個人的に「出席番号二十七番」が次点ですね。性格の悪い語り手が改心する話かな、と思っていたんですけど、いい意味で期待を裏切られました。「性格の悪い自分さえも肯定してあげる」話が大好物な僕としては非常に好きですねぇ。変わることだけが成長ではないという作者の人間に対する優しい眼差しを感じました。

 

まとめ

青春と青春の終わりを描いた傑作。もちろんおススメです。

 

 

太陽の坐る場所 (文春文庫)

太陽の坐る場所 (文春文庫)