思考するガム

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『フーガはユーガ』伊坂幸太郎/紹介と感想 不思議な能力を持った双子の数奇な物語

フーガはユーガ

伊坂幸太郎らしさビンビンの作品。無論楽しめました。 

できるだけネタバレのない紹介と感想にします。

 

 

 

作品紹介

常盤優我は仙台市のファミレスで一人の男に語り出す。双子の弟・風我のこと、決して幸せでなかった子供時代のこと、そして、彼ら兄弟だけの特別な「アレ」のこと。僕たちは双子で、僕たちは不運で、だけど僕たちは、手強い。(「BOOK」データベース引用)

 

 兄弟の人生

主人公はファミレス店で自分の能力についてと、いままでの人生について語ります。陰惨な家庭環境、いじめ、変態の悪行など。眉を顰めたくなる内容ばかりでした。しかし語り口が軽快なおかげで、すらすらと読み進められます。ただし、昔の伊坂作品と違い、ただ軽いだけでなく重みも残しているように感じました。(昔のは昔ので面白いんですけどね)

重要なのは、言っていることがすべてが事実とは限らない点です。主人公は、男に自分の過去を話しているのですが、合間合間に、わざわざ「真実とは限らない」と念を押してきます。作中で語られている能力は嘘かもしれませんし、なんだったら、内容すべてが嘘の可能性だってあります。いったい何が真実なのか。考えて読んでいくと面白いかもしれません。

 

不思議な能力

誕生日にしか使えない超限定的な能力です。自分の意思で使えないので能力とすらいえないかもしれません。西澤保彦の傑作『七回死んだ男』と近いので、現象といった方が正しいでしょうか。双子は現象を利用して人助けをします。善意からというより、自分たちの悲惨過ぎる家庭環境に想いを重ね、行動しているように見えます。伊坂作品のキャラクターらしい行動原理ですね。使い方がどれもユニークで、スカッとします。

 

終盤の展開

伊坂作品を多く読んでいる人間なら、おおよそどういう方向に話が運ばれていくか途中でわかる気がします。しかし展開が読めても面白いのが伊坂作品の凄いところ。要所要所で読者の予想を引っ繰り返してきます。そして著者の真骨頂である怒涛の伏線回収。ただ回収して絵解きをするだけでなく、作劇的な盛り上がりと重ねるのでカタルシスが倍増します。

ただ重く悲しいラストになりそうなところを、ユーモアを入れてウェットになり過ぎないような配慮があるあたり、やはり伊坂先生のバランス感覚は凄いなと改めて思いました。

 

まとめ

変な設定の変な話です。全体のバランスもやや歪つ。それなのに面白いです。不思議な読了感を残す作品でした。伊坂入門書としてはやや微妙かもしれませんが、伊坂好きなら楽しめる作品でしょう。オススメです!

 

フーガはユーガ

フーガはユーガ