思考するガム

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『死と砂時計』鳥飼否宇/紹介と感想 死刑囚のみを収監する刑務所で起きた6つの怪事件

死と砂時計 (創元推理文庫)

第16回本格ミステリ大賞受賞作

逆説の面白さを追求した本作、かなり楽しめました。ネタバレはありません。

 

 

作品紹介

死刑執行前夜に密室で殺された囚人、満月の夜を選んで脱獄を決行した囚人、自ら埋めた死体を掘り返して解体する囚人―世界各国から集められた死刑囚を収容する特殊な監獄で次々に起きる不可思議な犯罪。外界から隔絶された監獄内の事件を、老囚シュルツと助手の青年アランが解き明かす。終末監獄を舞台に奇想と逆説が横溢する渾身の連作長編。第16回本格ミステリ大賞受賞作。(Amazon商品紹介引用)

 

死刑囚のみ集められた終末監獄を舞台にした連作ミステリーです。出てくる登場人物は死刑囚と看守のみ。しかも多国籍なので、独特の世界観が出来上がっています。この舞台立てでしか成立しない本格ミステリーになっており、何度も感心させられました。

以下いくつかの短編の感想です。

 

「魔王シャヴォ・ドルマヤンの密室」

死刑執行を翌日に控えた二人の死刑囚が密室の中で殺害されます。法月倫太郎の『死刑囚パズル』を思わせる不可解な状況といえるでしょう。こちらは死んでいた人物の数奇な運命が強く印象に残る作品でした。多国籍であることが重要な意味を持ちます。トリックの一部は、かなりバカミス的。カーっぽいなぁと思いました。

 

「英雄チェン・ウェイツの失踪」

個人的に一番好きな短編でした。中国人の死刑囚が脱獄し、シュルツとアランはその捜索の手伝いをすることになるのだが…という話。チェン・ウェイツがなぜ目立ってしまう満月の夜に脱獄したのかという逆説的な状況が目を惹くところ。脱獄の方法も面白いですが、強烈なインパクトを残すオチが凄まじい。

 

「墓守ラクパ・ギャルポの誉れ」

墓守のギャルポが死体を掘り返して食べている、という噂が流れる。その真偽を確かめようとするのだが……という話。ギャルポがまともなコミュニケーションを取れないため、なかなか真相が見えづらくなっています。最後のギャルポの行動には驚愕。そしてその後の真相解明で、なるほどなぁとなりました。個人的に2番目に好きな短編でした。

 

「確定囚アラン・イシダの真実」

語り手のアランがなぜ死刑囚になったのか。その謎が解き明かされるエピソード。ミステリ読みであれば、過去の事件に何者かの作意が働いていたのでは、と考えるところでしょう。話は思いもよらない方向に展開していきます。

そしてラストには、なんとも言えない気持ちにさせられる、とある人物の動機が明らかにされます。そこを引っ繰り返すのかと困惑させられました。ただの泣ける話で終わらせないところが捻くれていますね。

 

まとめ

全編を通して逆説の面白さを堪能できる本作。本格ミステリ好きには当然オススメですよ。

 

 

 

死と砂時計 (創元推理文庫)

死と砂時計 (創元推理文庫)