思考するガム

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『ノッキンオン・ロックドドア 』青崎有吾/紹介と感想 2人の探偵が謎を解く

ノッキンオン・ロックドドア (徳間文庫)

正統パズラーな連作短編集です。

短編らしく、切れ味のいいトリックやロジックが並びます。

ネタバレなしの紹介と感想になります。

 

 

作品紹介

密室、容疑者全員アリバイ持ち―「不可能」犯罪を専門に捜査する巻き毛の男、御殿場倒理。ダイイングメッセージ、奇妙な遺留品―「不可解」な事件の解明を得意とするスーツの男、片無氷雨。相棒だけどライバル(?)なふたりが経営する探偵事務所「ノッキンオン・ロックドドア」には、今日も珍妙な依頼が舞い込む…。新時代の本格ミステリ作家が贈るダブル探偵物語、開幕!

 

二人の探偵がそれぞれ『ホワイ(なぜそうなったか)』『ハウ(いったいどうやったか)』の謎解きを分担し、事件解決に乗り出します。

得意なものを分担することで、次々と難事件を解決していくのです。

 

「飄々とした可愛らしい女子高生の助手」「殺害現場で間食しまくる女刑事」「元友人の犯罪コンサルタント」などなど、癖の強い主要キャラクターばかりで楽しいです。

以下、いくつかの短編の紹介と感想になります。

 

ノッキンオン・ロックドドア

 画家が密室状態のアトリエで殺害される。壁に飾られていた風景画6枚が床に放られ、その1枚は犯人の手によって赤く塗りたくられていた。いったなぜ?

 

感想

シリーズの記念すべき第一話を飾るにふさわしい佳作です。

「密室の謎」「一枚だけ赤く塗られた絵の謎」

それぞれハウとホワイに分類できますね。いったいどちらがメインの謎となるのか注目しながら読むとより楽しめるでしょう。

この短編では、二つの謎が表裏一体のようになっているのが面白いです。どちらか一方の謎が解ければ真相はわかるのですが、二つの謎を分けて考えるといつまで経っても真相に至れないようになっています。

最後に明かされるアレは想像を絶するものがありました。

 

 ダイヤルWを回せ

 暗号解読の依頼、事故死の真相を探ってという依頼――倒理と氷雨で二つの依頼を分担することになったのだが…。

 

感想

 二つの事件が同時に、という時点でいろいろと予測できてしまいますが、最後に明かされる真相はなかなか意表を突いたものになっています(特に金庫が開かないという謎解き部分)。本格ミステリのパターンを網羅している作者だからこそ書けた作品と言えるでしょう。面白いです。

 

チープトリック

とある会社の重役がライフルで銃殺される。しかし重役は殺されることを恐れ、窓には近づかず、カーテンを閉め切っていた状態だった。いったい狙撃手はどうやって狙い撃ちしたのか。

 

感想

探偵2人のライバルである糸切美影が初登場します。

トリックは驚くほどシンプルなもの。しかし、シンプルな構図を悟らせないためのミスディレクションが巧みです。手がかりの配置も巧妙。

 

 

十円玉が少なすぎる

助手の薬子が奇妙なエピソードを口にする。通学途中、男性がスマホでの通話で『十円玉が少なすぎる。あと五枚は必要だ』と不可解なことを言ったらしいのだ。倒理と氷雨は、それだけを手掛かりに推理を展開していくのだが…。

 

感想

ハリイ・ケメルマンの傑作『九マイルは遠すぎる』のオマージュ作品です。少ない手がかりをもとに、ほとんど妄想と言っていいようなアクロバティックな推理が展開されます。こういう作品ほんと好きなんですよねぇ。

なかなか〇〇〇〇(伏字)に思い至らないのはもどかしく感じられますが、そこに至るにはアレが邪魔をしているので、仕方ない部分もあるかと思います。

〇〇〇〇に至ってからが見物で、あれよあれよと読者の想像の上をいく推理を見せてくれます。どことなく洒落た結末も含め、『九マイルは遠すぎる』を彷彿とさせますね。

 

まとめ

二作目が決定されている本シリーズ。登場人物たちの因縁や陰を落とす過去の事件など、まだまだ片付いていない謎や伏線が多いです。これからに期待したい。

昔ながらの本格ミステリ、現代的な本格ミステリ、両方のうまみを同時に味わせてくれる本作。ミステリファンにおすすめですよ。

 

 

 

ノッキンオン・ロックドドア (徳間文庫)

ノッキンオン・ロックドドア (徳間文庫)