思考するガム

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『火のないところに煙は』芦沢央/紹介と感想 最凶の暗黒ミステリ

火のないところに煙は

これは怖い…。

実話怪談×ミステリーの秀作でした。ネタバレはありません。 

 

 

 

作品紹介

 「神楽坂を舞台に怪談を書きませんか」突然の依頼に、作家の「私」は、かつての凄惨な体験を振り返る。解けない謎、救えなかった友人、そこから逃げ出した自分。「私」は、事件を小説として発表することで情報を集めようとするが―。予測不可能な展開とどんでん返しの波状攻撃にあなたも必ず騙される。一気読み不可避、寝不足必至!!読み始めたら引き返せない、戦慄の暗黒ミステリ!(Amazon商品紹介引用)

 

作者本人が語り手を務め、不可解な話の真偽を確かめるという構成の連作短編集になっています。一番雰囲気が近いのは小野不由美先生の『残穢』でしょうか。

ホラーとしても素晴らしいのですが、それ以上にミステリとしての面白さがあると個人的には思いました。

 

第一話 染み

占い師から不愉快なお告げをされたカップルが関係を破綻させていきます。人間のどろっとした部分を描く話かな、と思っていると、意外な形で「染み」が出現するのです。染みの真意は果たして何なのか。最後にゾッとする真相が明らかになります。

 


第二話 お祓いを頼む女

ミステリとして一番よくできた話だと思いました。怪しい女性が子供を連れ、語り手の家にやってきます。女性の口から語られる怪異と子供の様子を比べてみて、思いもよらない真相が炙り出されていくのです。しかし、それだけで終わらないところがこの短編の秀逸さ。しっかりとホラー的なオチがつきます。

 


第三話 妄言

斜め上の構図を見せてくれるのが『妄言』です。これも人間が怖い系の話かと思いきや、終盤、斜め上の真相が明らかになります。SFかい、と思いました。口あんぐりですよ。

 


第四話 助けてって言ったのに

悪夢から逃れようとした夫婦の話です。主人公たちがロジックを駆使して法則を見出し、積極的に助けようとしますが、最終的に示されるのは何とも暗い気分にさせられるオチ。救いはなかったのかと頭を抱えたくなります。

 


第五話 誰かの怪異

素人考えでやった除霊に失敗したせいで、大変なことになった青年の話。これは途中で真相に気づいたんですが、ここでの感動的ともいえるオチは、ラストへの布石となっています。

 


最終話 禁忌

こ、怖い……。

今までの話が一つにまとまるエピソードです。やや強引にも思える繋げ方ですが、もしも彼女の仮説が正しかったらと考えると、ゾッとさせられます。連作短編集の締めくくりに相応しいエピソードでしょう。とにかく怖かったです……。

 

まとめ

いい意味で本棚に置くのを躊躇するタイプの小説です。ホラーファン、ミステリファンには強くおすすめしたいです。

 

 

火のないところに煙は

火のないところに煙は