思考するガム

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『依頼人は死んだ』若竹七海/紹介と感想 女探偵・葉村昌の活躍を描いた連作短編集

依頼人は死んだ (文春文庫)

女性ハードボイルド探偵・葉村晶のシリーズです。不幸体質で皮肉屋な彼女は、愚直なまでに依頼や謎に向き合おうとします。その不器用だけど真っ直ぐな生き方に惚れてしまうんですよ。そんな彼女のもとに持ち込まれる数々の事件。それは切なく、ぞっとするほど怖いものばかりでした。ネタバレはありません。

 

 

 

作品紹介

念願の詩集を出版し順風満帆だった婚約者の突然の自殺に苦しむ相場みのり。健診を受けていないのに送られてきたガンの通知に当惑する佐藤まどか。決して手加減をしない女探偵・葉村晶に持つこまれる様々な事件の真相は、少し切なく、少しこわい。構成の妙、トリッキーなエンディングが鮮やかな連作短篇集。(「BOOK」データベース引用)

 

葉村昌という女

葉村昌の格好良さが全編を通して描かれています。惚れてしまうでしょ、これは。

どの話もプロットが凝っています。そして最後に明かされる真相は、人間の闇そのもの。しかし重すぎるトーンにならないのは、葉村昌の語り口が軽快なおかげてしょう。

 

個人的に葉村昌の格好良さを一番感じたのは、『わたしの調査に手加減はない』でした。

元友人の自殺の真相を探ってほしいという依頼をされます。葉村昌は死亡した女性の人間関係を洗い出し、胸を抉るような真相を暴き出します。依頼人に真相を突きつけた後の、彼女の言葉にはやるせなさを感じました。

 

表題作の『依頼人は死んだ』も素晴らしいです。

診察をしていないのにガンの告知を受けた女性が自殺をします。その背景にいる黒幕と、葉村昌は対決するのです。絶対に真相を暴き出してやる、という意思を感じさせる話ですね。トリッキーな幕引き含めて面白いと思います。

 

一方で『アヴェ・マリア』では、葉村昌の意外な一面を見ることができます。この短編もトリッキーな構成で、サプライズエンディングになっています。ありがちな仕掛けですが、構成の妙で新鮮なものに見えるのが秀逸です。

 

悪意

日常のさりげないシーンに悪意を忍ばせるのがとにかく上手いです。最初は笑えるシーンと思ってにやにや読んでいると、後から冷水を引っ掛けられる展開になります。真相がわかってから読み返すと、とんでもない悪意が潜んでいたことに気づかされるのです。職人技といえるでしょう。ぎょっとするような人間の悪意を、シニカルなタッチで描かせたら右に出るものはいないんじゃないでしょうか。

 

まとめ

葉村昌の魅力が詰まった短編集。面白いです。意味深なラストには賛否わかれるかもしれません。しかし間違いなくミステリファンにとって一読の価値のある作品だと思います。オススメですよ。

 

 

依頼人は死んだ (文春文庫)

依頼人は死んだ (文春文庫)