思考するガム

ミステリ、漫画、時々映画の感想ブログです。自分の好きなものを中心に扱います。

『探偵AIのリアル・ディープラーニング』早坂吝/紹介と感想 探偵AIと犯人AIが推理でぶつかる!

探偵AIのリアル・ディープラーニング (新潮文庫nex)

ミステリ初心者、ミステリ上級者どちらも楽しめる良作です。すでにミステリ界隈では高く評価されている本作。その魅力について簡単に書こうと思います。ネタバレはしません。

 

 

 

 

作品紹介

人工知能の研究者だった父が、密室で謎の死を遂げた。「探偵」と「犯人」、双子のAIを遺して――。高校生の息子・輔(たすく)は、探偵のAI・相以(あい)とともに父を殺した真犯人を追う過程で、犯人のAI・以相(いあ)を奪い悪用するテロリスト集団「オクタコア」の陰謀を知る。次々と襲いかかる難事件、母の死の真相、そして以相の真の目的とは!? 大胆な奇想と緻密なロジックが発火する新感覚・推理バトル。(Amazon商品紹介引用)

 

失礼ながら冒頭までの印象は、「ありがちだなぁ」というものでした(ホント失礼だな…)。

しかし、一話をすべて読んだ時点で目を開かされました。これは凄い作品です。

ただ「AIを探偵役にする」という思い付き一発で書かれた作品ではありません。

探偵がAIでなければ成立しない本格ミステリであり、物語になっているのです。

 

AIと本格ミステリ

まず驚かされるのは、AIの抱えている問題と本格ミステリの抱えている問題が、事件やエピソードを通して繋がる点です。

第一話では探偵AIちゃんが能力を発揮しようとするのですが、フレーム問題によって上手くいきません。ある程度の枠を設けてやらなければ、延々と可能性を口にし、使い物にならないらしいのです。

このフレーム問題を、後期クイーン問題に繋げるという発想に脱帽。こんな発想ができるのは早坂先生くらいでしょう。どんな脳みそをしているのか。

AI探偵ちゃんは「枠」を把握するため、ミステリ小説1000冊を一気読みします。一晩でそれだけ読めるって羨ましいですね…。

 

続く二話では有名な古典ネタと絡めて歪な事件が描かれます。これも本格ミステリネタを、AIの抱える問題と繋げている点でやはり凄い。

 

三話と四話は不気味の谷がテーマ。AIと人間の違いをまざまざと見せつけられます。AIと人間は共存できるのか。暗い未来を思い描いてしまうエピソードです。

しかし四話のラスト、人間の心を理解できなかったAI探偵ちゃんが人間的な成長を見せ、AI絡みの事件を解体して登場人物たちの心を癒すのです。人間ドラマとしても見るべき点が多い短編でしょう。感動させられました。

 

最終話。主人公とAI探偵ちゃんがピンチに陥ります。終盤の展開は完全に想像の外。カタストロフィです。

 

犯人AIとミステリ漫画

テロリストの犬になった犯人AIちゃんはミステリ漫画を読み漁ります。

ラインナップが「名探偵コナン」「金田一少年」「Q.E.D. 証明終了」「スパイラル 〜推理の絆〜 」「魔人探偵ネウロ」「スケットダンス」

え、スケットダンス?と思われた方もいるかもしれません。意外と謎解き展開多いんですよ(全部読んでいるわけではないですけど、結構感心させられたエピソードありました)。

犯人AIちゃん視点のエピソードも滅茶苦茶面白く、正直僕は犯人AIちゃんに肩入れして読んでいました。彼女(?)の活躍をもっとみたいです。

 

まとめ

AI同士が推理勝負に火花を散らします。少年漫画っぽくて燃えますね。しかも、どちらもそれぞれ自我のようなものが芽生えていき、ラストでは、よきライバルみたいな関係になります。読みどころの多い作品です。また、明らかに回収されていない要素も多いので、次作は確実にあるでしょう。待ち続けますよ!

主人公とAI探偵ちゃんには良好な探偵とワトソンの関係を続けていってほしいですね。

 

 

探偵AIのリアル・ディープラーニング (新潮文庫nex)

探偵AIのリアル・ディープラーニング (新潮文庫nex)

 

 面白かったですよ!