思考するガム

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『名探偵に薔薇を』城平京/紹介と感想 一部は傑作、二部は大傑作

名探偵に薔薇を (創元推理文庫)

『名探偵』をテーマにした作品は数あれど、これを超えるものはないのではないでしょうか。『スパイラル 〜推理の絆〜』『絶望のテンペスト』『虚構推理』でヒットを飛ばした著者による、処女作にして、日本ミステリー史に残る大傑作です。

ミステリ部分のネタバレはないですが、テーマには触れます。予備知識なしで読みたい方はブラウザバックをお願います。

 

 

作品紹介

 始まりは、各種メディアに届いた『メルヘン小人地獄』だった。それは、途方もない毒薬をつくった博士と毒薬の材料にされた小人たちの因果を綴る童話であり、ハンナ、ニコラス、フローラの三人が弔い合戦の仇となって、めでたしめでたし、と終わる。やがて童話をなぞるような惨事が出来し、世間の耳目を集めることに。第一の被害者は廃工場の天井から逆さに吊るされ、床に「ハンナはつるそう」という血文字、さらなる犠牲者……。膠着する捜査を後目に、招請に応じた名探偵の推理は? 名探偵史に独自の足跡を印す、斬新な二部構成による本格ミステリ。(Amazon商品紹介引用)

 

名探偵の活躍を描いた第一部

家庭教師の三橋の視点から物語は綴られます。童謡をもとにした見立て殺人、怪しすぎる登場人物たち、一切証拠の残らない毒薬。本格ミステリらしい道具立てですね。そこに三橋の友人である名探偵・瀬川みゆきが登場するのです。彼女は完膚なきまでに謎を解き明かし、事件に巻き込まれた家族を救います。

第一部のラスト、三橋は瀬川みゆきの超人的な推理を前にして「彼女の行く末を示す黒い光を見たような気がした」と心の中で述べています。それは意外な形で現実となるのです。

 

名探偵の苦悩を描いた第二部

第二部では瀬川みゆきの視点で物語が綴られます。一度救ったはずの家で、再び惨劇が起こるのです。事件の調査をしながら、なぜ名探偵として生きなければならなかったのか、彼女の過去や宿命が明かにされます。

話は二転三転し、最後には思いもよらない真相が顔を出します。それは、あまりにも辛すぎるものでした。この真相により、『名探偵に薔薇を』が単なる本格ミステリではない、「名探偵」を描いた小説であることが判明するのです。

作者は本格ミステリの形式を破綻させてもいいという覚悟のうえで、名探偵・瀬川みゆきの物語を書き切ったのでしょう。だからこそ、深く胸を打つラストになっているのではないでしょうか。

 

テーマにばかり触れましたが、ミステリとしても非常に面白いです。「誰が、どうして毒を入れたのか」というシンプルな謎の裏に隠されたもう一つの謎。そして、多重的に繰り出されるダークな解答。一切気を抜けない展開が続きます。

 

まとめ

名探偵の存在をテーマにした大傑作です。少しでも名探偵やミステリに触れたことのある方は読んでみてください。

瀬川みゆきと作者に、薔薇を送りたくなりますよ。

 

 

名探偵に薔薇を (創元推理文庫)

名探偵に薔薇を (創元推理文庫)