思考するガム

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『七回死んだ男』西澤保彦/紹介と感想 ループ系本格ミステリの傑作

新装版 七回死んだ男 (講談社文庫)

後続の作家たちに多大な影響をあたえたループ系SFミステリの傑作です。

特殊な設定を導入した本格ミステリ作品は、いまでこそ珍しくないですが、この作品がなければ誕生しなかった作品は多いのではないでしょうか。

ネタバレなしの紹介と感想になります。

 

 

 

 

作品紹介

同一人物が連続死! 恐るべき殺人の環。殺されるたび甦り、また殺される祖父を救おうと謎に挑む少年探偵。どうしても殺人が防げない!? 不思議な時間の「反復落し穴」で、甦る度に、また殺されてしまう、渕上零治郎老人――。「落し穴」を唯一人認識できる孫の久太郎少年は、祖父を救うためにあらゆる手を尽くす。孤軍奮闘の末、少年探偵が思いついた解決策とは! 時空の不条理を核にした、本格長編パズラー。(Amazon商品紹介引用)

 

本格ミステリとしての完成度

同じ時間軸を何度も行き来するタイプの、いわゆるループものジャンルは一定の面白さが保証されたフォーマットだと思います。(リプレイ、恋はデジャヴ、ターン、うる星やつら2ビューティフルドリーマー、ひぐらしのなく頃に、クロスチャンネル、リピート、シュタインズ・ゲート、まどか☆マギカ、オール・ユーズ・ニードキルなど)。

近年のオタクカルチャーの中で特に目にする設定ですね。使い方次第では、まだまだ面白いものを作れそうです。実際、世界中でいまだに作られています。

その中でも『七回死んだ男』が突出しているのは、その設定を「本格ミステリ」として使い倒している点でしょう。この設定でなければ成立しないトリックが使われています。さらに凄いのは、その絶対的な設定《ルール》を疑わざるを得ない謎が最後に提示されている点です。その謎に対しての解答もまた、ロジカルなので、本格ミステリとして申し分のない出来になっています。

 

コメディとしての秀逸さ

笑えます。

ループもので人の死を防ごうとする、と聞いたら、悲壮感漂うシリアスな物語を連想するところですが、本作は違います。まず祖父と主人公の間に、血縁である以上のつながりがないので、祖父が死体になって発見されても主人公は比較的落ち着いています。

主人公の久太郎くんは、「時間の反復落し穴」にはまると強制的に同じ日を繰り返すことになります。能力ではなく体質なので、好きな日にループ現象を起こすことはできません。強制的に何度も同じ日を繰り返しているせいか、精神年齢はとっくの昔にお爺ちゃんになっています。ですから、妙に達観した視点になっているのが面白いところ。

祖父の死に様がエスカレートしていくのも見どころで、「おいおいマジかよ」と苦笑したくなるシーンが連続します。

ループごとに親族たちの見え方が変わってくるのも面白いです。普通ならドン引き必須の秘密なのに、久太郎くんが達観しているせいか、笑える場面に見えてくるから不思議です。久太郎くんの独自の感性のおかげで、緩く楽しめます。

 

まとめ

「ミステリって難しそうだなー」

そう思っている初心者にこそオススメしたい作品です。

ミステリ好きでまだ『七回死んだ男』を読んでいないという方は、どんな本を差し置いてでも、まずこちらを読むことをオススメします。

 

 

新装版 七回死んだ男 (講談社文庫)

新装版 七回死んだ男 (講談社文庫)

 

 傑作です。