思考するガム

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『そして扉が閉ざされた』岡嶋二人/紹介と感想 核シェルターから生きて出たければ謎を解け

そして扉が閉ざされた (講談社文庫)

物語は核シェルター内だけで展開されます。

岡嶋二人が「唯一徹底した『本格』を書いてやろうという決意のもとに書いたものなんだ」と語っている本作。本格ミステリ好きとしては飛びつかざるを得ません。

『そして扉が閉ざされた』は後期岡嶋二人の傑作のひとつに数えられています。(残り二つは『99%の誘拐』と『クラインの壺』)

ネタバレなしの紹介と感想になります。

 

 

 

作品紹介

極限の密室事件――富豪の若き1人娘が不審な事故で死亡して3カ月後、彼女の遊び仲間だった男女4人が、遺族の手で地下シェルターに閉じ込められた。娘の母親の意図は何なのか、そもそもあの事故の真相は何だったのか? 密室の恐怖、友人たちへの不信感、そして空虚な時間への苛立ち。4人が死にものぐるいで脱出を試みながら推理した意外極まる結末は? 極限状況の密室で謎を解明する異色傑作推理長編。(Amazon商品紹介引用)

 

先進的な試み

今でこそ珍しくないですが、どこかに閉じ込められて謎解きを強いられるという展開は当時新しかったのではないでしょうか。(刊行は1987年)

単にサスペンスとして面白くするためだけの設定ではありません。余剰を極限までそぎ落とすための舞台装置となっています。推理に集中させるために作られているのです。

登場人物たちが事故の記憶を思い出すことにより、少しずつ推理のデータが揃っていく展開になります。

 

本格ミステリとしての楽しさ

登場人物達は最初シェルターから出られないものかと行動を起こしますが、すぐに八方塞になります。とはいえ、過去の事件はすでに警察が「事故」として処理しています。いまさら事故のデータを見せられても、事件性を見いだせるとは思えません。

登場人物の殆どが謎解きを放棄している中、一人だけ、事件に向き合おうとする女性がいます。彼女が警察の見逃した、犯人の「致命的なミス」を見出すところから、謎解きミステリとしての面白さが色濃くなります。

それにしても、彼女の着眼点は素晴らしい。

最後に示される真相は驚きのものになっています。

 

岡嶋二人のミステリ作品で探偵役を務めるのは一般人です。今作のように、探偵役はどの作品でも謎解きをせざるを得ない状況に追い込まれます。思考回路が一般人のそれなので、感情移入しながら謎解きを楽しめるわけです。

 

青春ミステリとしての苦み

結末は何とも言えない苦さです。いや、ここまで苦い青春もの読んだことありませんよ。

本格ミステリとしては存分に楽しんだんですが、一点気になるのは、とあるキャラクターが可哀想すぎるところ。救いがなさすぎますよ! 

胃にドスンときました。主人公のことよりも応援していたので、結末を読んだ時は結構沈みました(笑)

 

まとめ

本格ミステリ好きであれば楽しめると思います。オススメです。

 

 

そして扉が閉ざされた (講談社文庫)

そして扉が閉ざされた (講談社文庫)