恥ずかしながら法月倫太郎先生の初期作品は未読のものが多いです。
最近読んだ第一短編集の紹介と感想になります。ネタバレはないのでご安心を。
作品紹介
なぜ犯人は、死刑執行の当日、首を縄に差し入れた死刑囚を殺さなければならなかったのか。なぜ犯人は図書館の蔵書の冒頭数ページを切り裂くのか、それもミステリーばかり。なぜ男は恋人の肉を食べたのか…。異様な謎につつまれた怪事件に、名探偵・法月綸太郎の明晰かつアクロバティックな推理が冴えわたる(BOOKデータベース引用)
名探偵・法月倫太郎の新たな一面を知ることができてよかったです。
前半は重たいトーンでした。しかし中盤、司書の穂波が出てからはライトなノリに変わります。どちらもいいですね。
以下、いくつかの短編の紹介と感想になります。
死刑囚パズル
死刑執行間際の死刑囚が毒殺される。放っておけば被害者は吊られていたはずなのに。原因究明のため、法月親子は現場の調査をすることになるのだが……。
感想
ミステリファンの間では何かと話題になる作品です。
首が吊られる間際の死刑囚が毒殺されるという、あまりにも不可解な状況が面白く感じられます。
倫太郎の推理は思いのほか地に足がついていて、飛躍するところがありません(不可解な事件なので、ぶっ飛んだロジックで解くのかと思った…)。正攻法で犯人を炙り出します。
最後に明かされる動機は、何とも言えない後味を残します。
自分の中でややハードルを上げ過ぎていた為、驚きは少なかったのですが、ミステリファンの間で話題になるだけのことはある作品だと思いました。精密なロジックは必見です。
黒衣の家
倫太郎の親戚の家で毒殺事件が起こる。単純な事件に思われたが、毒を入れたタイミングが判明しない……。
感想
こ、これは…!
アレを知らなければ傑作認定していたでしょう。アレを知っているせいで、かなり早い段階で真相に至れました。おそらく僕のような読者は多いんじゃないでしょうか。(アレ、アレ連呼しても伝わるわけない)
アレを知らない状態で読みたかったです。
あと、この動機を扱ったミステリは意外と多いです。他作品で知るケースもあると思うので、気になった方は早めに読んでおきましょう。
カニバリズム小論
とある男が同棲していた彼女を殺害して食べた。 倫太郎は、カニバリズムについて詳しい大学の級友に会いに行き、「なぜ犯人は彼女を食べたのだろう」と議論を交わすのだが…。
感想
本書最大の異色作にして問題作。
カニバリズムについての膨大なやり取りに圧倒されます。オチのインパクトはなかなかのもの。戦慄が走りました。
小林泰三先生あたりが書きそうな作品。法月先生、こういうのも書くのかとびっくり。やられました。
まとめ
他の作品も面白いんですが、どうしても最初の3つに目が行ってしまいました。
もっと早くに読んでおけばよかった、と思いましたね。法月倫太郎先生の作品はひき続き読んでいこうと思います。
第一短編集です。