思考するガム

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『屍人荘の殺人』今村昌弘/紹介と感想 新時代の本格ミステリに刮目せよ 映画化&漫画化決定!

屍人荘の殺人

新本格の始まりから数十年。新たなクラシックと呼べる作品が登場したのかもしれません。

とても読みやすいので、ライトノベル・ライトミステリしか読んだことのない読者にもオススメです。癖玉のように見えて実は直球なので、ミステリ入門書としても最適なのではないでしょうか。

今回の記事は紹介・特殊設定、まとめという項目以外はネタバレがあるので未読の方は注意してください。

作品紹介

神紅大学ミステリ愛好会の葉村譲と会長の明智恭介は、曰くつきの映画研究部の夏合宿に加わるため、同じ大学の探偵少女、剣崎比留子と共にペンション紫湛荘を訪ねた。合宿一日目の夜、映研のメンバーたちと肝試しに出かけるが、想像しえなかった事態に遭遇し紫湛荘に立て籠もりを余儀なくされる。緊張と混乱の一夜が明け――。部員の一人が密室で惨殺死体となって発見される。しかしそれは連続殺人の幕開けに過ぎなかった……!! 究極の絶望の淵で、葉村は、明智は、そして比留子は、生き残り謎を解き明かせるか?!

 

第27回鮎川哲也賞受賞
本格ミステリ大賞受賞
『このミステリーがすごい!2018年版』第1位
『週刊文春』ミステリーベスト第1位
『2018本格ミステリ・ベスト10』第1位
 
 
発売当時から本格ミステリ界隈では絶賛の嵐でした。新本格を代表する綾辻行人先生、有栖川有栖先生など、有名な方たちが推薦しておられます。
結論から言うと、自分もとても楽しめましたよ!
 
 
特殊設定
現実には存在しない要素が出てきます。
本格ミステリに詳しくない方は「それじゃフェアな謎解きできないじゃん!」と、そう思われるかもしれません。その点は安心してください。
本格ミステリの歴史を紐解けば、特殊設定ミステリの名作はたくさんあるのです。
「生ける屍の死」「七回死んだ男」「Another」「折れた竜骨」など、どれも名作の誉高い作品です。
 
現実にはない要素が取り入れられた作品には、独特の魅力があります。幽霊が出たり、魔法使いが登場したり、何でも答える鏡が出たり、神様が一行目に犯人を教えてくれたり……。割と何でもありです。
とはいえ、何でもありでは謎解きができないのも事実。
特殊設定ミステリで重要なのは、謎解きの前にあらかじめ読者に「この世界ではこういう要素がある」と説明することでしょう。これをちゃんとできている作品は、フェアな特殊設定ミステリだと認められ、本格ミステリ読者から受け入れられます。
 
テレビゲームで考えてみればわかりやすいと思います。あらかじめできることは限られていますよね。オープンワールドのような自由度の高いゲームでもそうです。作り手によって設定されたものを受け入れ、できることを考えていく。特殊設定の本格ミステリは、そこを楽しむコンテンツなのです。
 
以下はネタバレ含む感想になるので注意してください。
 
 
 

意外な展開(ネタバレあり)

オーソドックスなミステリ的導入で、事前知識のない人は、「あーはいはい、こういうのね」と舐めてかかるかもしれません。

しかし、奴らが登場してから事態は一変。あれよあれよとサバイバルものに早変わりします。僕は正直アレが出てくることは知っていたので「ついに来たか」と思っただけでした。意外だったのは探偵役だと思われていたあの人が死んだところですかね。良いキャラクターだったので、「あ、死んじゃうんだ」と悲しくなりましたよ。

本格ミステリではフーダニットを複雑化するために登場キャラクターを増やしがちです。本作では今までありそうでなかった(ありますかね…?)方法で、登場人物の整理をしてくれているところが素晴らしかったです。ミステリ初心者への配慮がうかがえます。語り手が本格ミステリ好きなのもわかりやすさに拍車をかけているのではないでしょうか。

 

 

 

驚愕の密室トリック (ネタバレあり)

正直このトリックだけで200点は出ているでしょう。この作品でしか成立しないものになっています。一つ一つの要素を取り出していけば、過去のトリックのパターンに当てはめることも可能です(鮎川哲也のアレとかを意識していると思われます)。しかし、重要なのは上記で言ったようにこの世界でしか成立しないという部分でしょう。設定を見事に使い倒した感があります。

 

奴らを利用して2度殺す、という狂気の理論もインパクトがあります。この作品ならではのホワイです。細かい手掛かりも周到でした。

 

 

まとめ

世評通りの傑作です。本格ファンなら必読でしょう。 ミステリ初心者にもオススメです。
果たして映画や漫画はどうなるのか。今から楽しみで仕方ありません。
 
 
屍人荘の殺人

屍人荘の殺人

 

 傑作です。