思考するガム

ミステリ、漫画、時々映画の感想ブログです。自分の好きなものを中心に扱います。

『アリス殺し』小林泰三/紹介と感想 悪夢と奇想の不条理世界  文庫化

アリス殺し (創元推理文庫)

傑作です。小林泰三作品はグロテスクだったり過剰に理屈っぽいキャラクターが登場したりと癖の強いことで有名ですが、今作はミステリ好きであれば、そこそこハマる人は多いんじゃないでしょうか。

二転三転四転と意外な展開で驚かしてくれるので、ミステリ初心者にもオススメしやすい気がします。しかし、ちょっとだけグロいです。ネタバレはない…と思いたい。心配な方は作品紹介とまとめだけ見て切り上げてください。

 

 

 

作品紹介

最近、不思議の国に迷い込んだアリスという少女の夢ばかり見る栗栖川亜理。ハンプティ・ダンプティが墜落死する夢を見たある日、亜理の通う大学では玉子という綽名の研究員が屋上から転落して死亡していた―その後も夢と現実は互いを映し合うように、怪死事件が相次ぐ。そして事件を捜査する三月兎と帽子屋は、最重要容疑者にアリスを名指し…邪悪な夢想と驚愕のトリック!

 

不思議の国の住人たちが、殺されていく
どれだけ注意深く読んでも、この真相は見抜けない。
世界でシリーズ累計30万部突破! 悪夢×メルヘン×ミステリ

 

こんな書かれ方をすると嫌でも期待が高まりますよね。

今作では、夢の中のアリス世界と我々のいる現実世界での関連性が肝になります。二つの世界はリンクしており、夢の中で登場人物が死ぬと現実世界での登場人物まで死んでしまうのです。

夢世界での語り手・アリスは犯人だと疑われてしまい、死刑の危機が迫ります。死を回避するために、現実世界と夢世界の両方で犯人探しをすることになるのですが果たして真相は…という内容です。

 

 

不条理な会話劇

小林泰三作品では定番なのですが、今作も常軌を逸したレベルで理屈っぽい人が出てきます。感情を一切考慮しない、機械のような登場人物です。一方で、常軌を逸したレベルの馬鹿まで登場するのだから大変です。

当然、両者の会話は噛みあいません。ある程度の常識人である語り手とも、なかなかコミュニケーションが成立しないという状況が続きます。

しかし過剰と思える言葉遊びと会話のズレの中に、ミステリ的な手掛かりが大量に含まれているのです。油断なりませんね。

 

小林泰三作品とアリス世界

 不思議の国のアリスをモチーフにしたミステリはたくさんありますが、個人的に最もミステリ的にマッチしている作品だと思いました。

もともとアリスキャロルの原作からして不条理の塊みたいな作品ですからね。小林泰三との相性はバッチリです。題材選びの時点で勝利していたと言えるでしょう。

 

論理を突き詰めた先には不条理が待っている

論理を突き詰めていった結果、この世界の常識さえも揺らいでしまう…。

小林泰三先生はどちらかと言えばホラー畑やSF畑で活躍されているイメージがありますが、今回はミステリにジャンル分けできますね。

しかしどのジャンルでも一貫しているのは「論理を突き詰めた先の恐怖を描いている」点だと思います。

彼の小説が怖いのは、「この世界は本当に自分の考えている通りにできているんだろうか……」と読者に考えさせるからではないでしょうか。

 

まとめ

冒頭で傑作と言いましたが、正直なところ人を選ぶ作品ではあります。とはいえ、紹介文や感想にピンときたのなら読んで後悔はしないと思います。オススメです。

 

ちなみにシリーズ4作目の『ティンカーベル殺し』が現在連載中です。どんな作品になるのか楽しみですね!

 

 

アリス殺し (創元推理文庫)

アリス殺し (創元推理文庫)

 

 最高です

 

 

クララ殺し (創元クライム・クラブ)

クララ殺し (創元クライム・クラブ)

 

シリーズ2作目。 あの女性が出た時は小躍りしたくなりました。小林泰三ファンになら想いが伝わると思います。

 

 

ドロシイ殺し (創元クライム・クラブ)

ドロシイ殺し (創元クライム・クラブ)

 

シリーズ3作目。SF的な面白さが堪能できました。