思考するガム

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『本と鍵の季節』米澤穂信/紹介と感想 ほろ苦い青春ミステリの快作

本と鍵の季節

 

米澤穂信先生の作品はどれも好きです。毎回ミステリを読む喜びを感じさせてくれるからでしょう。今回は『本と鍵の季節』の紹介と感想になります。

 

 

 

 

作品紹介

堀川次郎は高校二年の図書委員。利用者のほとんどいない放課後の図書室で、同じく図書委員の松倉詩門と当番を務めている。背が高く顔もいい松倉は目立つ存在で、快活でよく笑う一方、ほどよく皮肉屋ないいやつだ。そんなある日、図書委員を引退した先輩女子が訪ねてきた。亡くなった祖父が遺した開かずの金庫、その鍵の番号を探り当ててほしいというのだが…。図書室に持ち込まれる謎に、男子高校生ふたりが挑む全六編。(bookデータベース引用)

 

 

著者の青春ミステリシリーズはこれで3つ目。正直、「古典部」や「小市民」の方を出してほしいと思いました。しかし、読んでみたらこちらも大変素晴らしい作品で堪能させられちゃいましたよ。面白かったです。

 

 

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祖父の遺した金庫を開けてほしい。そんな依頼が図書室に持ち込まれる。憧れの先輩の頼みを断ることができず、堀川は友人の松倉を連れ、先輩の家を訪ねてみることにしたのだが……。

 

 

感想

いきなりヘビーな話で驚きました。

ミステリとしては、たった一つの気づきにより思わぬ真相が浮かべあがってくるところが秀逸です。緊張感のある終盤の展開も素晴らしく、すべてがわかると腑に落ちる作りになっています。 

 

ロックオンロッカー

堀川と松浦が二人で髪を切りに行くことに。髪を切ってもらい店を出た後、松浦が「面白いものが見られる」と言い始める。店の入り口を見張っていると、そこには……。

 

 

感想

今回二人は傍観者に徹しています。何となく、メルカトル鮎モノの某傑作短編を彷彿とさせる状況です。(いや、傍観するという以外はまったく似てないか…)

 

米澤穂信の青春ものでは、主人公たちが積極的に事件に関わろうとはしません。一定の距離を置こうとします。謎を解くということは、他者の人生に介入することであり、高校生である自分たちには荷が重すぎると考えているからでしょう。冷めているようにも見えますが、彼らには彼らなりに思うところがあるのです。

とはいえ今回の件では、そもそも介入する必要性が皆無なので傍観に徹しているだけだと思いますが。

 

 

金曜に彼は何をしていたのか

テスト期間中に学校の窓ガラスが割られる事件が発生。兄の容疑を晴らしてほしいと、後輩の男子生徒が頼みに来る。お人好しの堀川はすぐに了承するが、松浦も珍しく事件の調査に乗り気だった。果たして真相は……。

 

 

感想

最後まで油断のできない短編です。

探偵二人の考えの違いが推理に揺らぎをあたえていて面白いです。結局のところ、人間の思考を完璧に推理するのは不可能なのでしょう。

オチはなかなかのインパクト。そして、何かを暗示していそうであり、かなり意味深です。

 

 

ない本

自殺した生徒の友人が図書室にやってくる。自殺した生徒は生前、図書室から借りていた本に遺書を挟んでいたかもしれないというのだ。データを見るわけにはいかないので、二人は図書委員としての知識を使い、借りていた本を探し当てようとするのだが……。

 

 

感想

図書委員という設定が活かされた謎解きがまず素晴らしいです。

自殺という不穏な事件に二人の探偵の微妙に噛み合わない推理、後半のひねりの効いた展開、そして、ほろ苦いラスト。

すべての要素が見事にハマっていました。この短編集から一つ選ぶならこれでしょう。傑作と言っていいんじゃないでしょうか。

 

 

昔話を聞かせておくれ

松浦が「昔話をしよう」と堀川に持ちかける。話は意外な方向に流れ、二人で宝探しをすることになるのだが……。

 

 

感想

本書で最も分量の割かれた短編です。さりげない導入からミステリ的な要素がいくつも盛り込まれています。

お宝を探すという青春ものらしい流れはウキウキしますね。ただし、楽しいだけで終わらないのが米澤流です。

 

 

友よ知るなかれ

「昔話を聞かせておくれ」の後日談。 

 

 

感想

やっぱり苦い!苦すぎる!

ここにきて二人の考え方の違いが重く読者にのしかかってきます。古典部の『いまさら翼と言われても』のラストもそうでしたが、宙づりのまま強制終了。物語の切りどころが読者泣かせです。ま、そこがいいんですけどね、考える余地を残してくれるところが素晴らしいです。さて、二人の関係はこの後どうなったのか、続編は出してくれるのか。えるたそでなくとも、非常に気になるところです。

 

 

まとめ

ほろ苦く面白い青春ミステリでした。続編希望です。もちろん、「古典部」や「小市民」の続編も心待ちにしています。

 

「小市民シリーズ」に関しては、短編が雑誌に連載されているので、近いうちに本としてまとまるかもしれません。楽しみです。

 

 

 

本と鍵の季節

本と鍵の季節

 

 面白かったです。  

 

 

春期限定いちごタルト事件 小市民シリーズ (創元推理文庫)

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 小市民シリーズの一作目。

近いうちに紹介記事を書きたいなぁ。